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2007年7月 6日 (金)

沢口靖子「李香蘭」

正確には沢口靖子主演の「さよなら李香蘭」ですが。1989年のフジテレビのドラマです。遅ればせながらビデオを見てみました。上戸彩「李香蘭」を見て「李香蘭になりきれなかった上戸彩」と言い放った元フジテレビの横沢氏が製作者として名を連ねています。まったく、テレサテン物語の原作者有田氏といい、発言に影響力のあるテレビ関係者が上戸彩「李香蘭」を辛らつに言うのはどういうわけでしょうか。嫉妬心を公にしているのだとしたらどうかと思います。実際に上戸彩李香蘭の歌う夜来香のyoutube動画を見た世界中の方からのコメントはこちらを参照してください。非常に評判がいいです。

上戸彩「李香蘭」の歌う上海ステージでの「夜来香」はこちら 

さて、上戸彩と沢口靖子の二つの「李香蘭」。同じ一つの人生を扱っているからには相当似ているかと思いきや、脚本が別だからか展開もかなり違っていました。原作は上戸彩「李香蘭」は山口淑子著の「李香蘭を生きて」、一方「さよなら李香蘭」は、山口淑子・藤原作弥共著の「李香蘭 私の半生」になっています。

「さようなら李香蘭」にずっと流れるベースには、日本軍部に対する批判精神があるように感じました。平頂山事件での村民3000人虐殺(注:中国側主張では死者3000人で、どちらのドラマでもこの数字が使われています。数字には別の説があり当時の平頂山村の人口は約1400人、国連理事会での発表では死者700人とするものもあります)では、銃撃シーンがリアルに描かれていたし、甘粕氏に関しては、中国人俳優への給与を日本人に近づけるなど満州人思いの施策を行う場面もありましたが、冷酷で下劣に描かれる場面が多かったです。李香蘭の父親は自分が愛する中国を日本軍がズタズタにすることへの怒りから酒におぼれる、という展開もありました。

また、反日テロリスト集団というか反日パルチザンみたいな組織が親日派の中国人映画制作者を暗殺するシーンも上戸彩「李香蘭」に無かったものです。実際、シカゴのギャング団なみにピストルでドンパチやっていたようで、上戸彩「李香蘭」で少し違和感のあった、「戦争中にもかかわらずどこかのんびりして華やかな社交の街上海」、といったイメージとはやはり違っていたのだと認識させられました。Photo_16

沢口靖子「李香蘭」ではこのような展開を使って、李香蘭が日本人であることを隠そうとし、また隠し続けることに悩み、裁判では彼女を有罪にしようという中国人の意思が当然と感じられる、そんなストーリの持っていきかたをしていました。

上戸彩「李香蘭」ではそのような背景描写は薄く、替わりに李香蘭の味わう個人的な疎外感やアイデンティティへの悩みなどによって時代背景をプロットしており、上戸彩さんの役割が重かった脚本だと思います。

歌の場面は、沢口靖子もがんばっていて、全部自分で中国語で歌っていました。発音も一つ一つしっかりと発声していました。まじめな彼女のことですから相当練習したものと思われます。この辺は上戸彩さんと共通の女優魂を感じます。「売糖歌」は別歌詞バージョンが使われていて新たな発見でした。この曲は上戸彩「李香蘭」と違ってフルバージョンで最後まで聴くことができ、夜来香と並ぶメインの曲になっていました。

「さよなら李香蘭」ですこし違和感があったのは、例の「テレサテン物語」と同じく、中国人が中国語で演じるべきところで誰でも知っている日本人俳優が日本語で会話する、というところです。フジテレビらしい豪華キャストなのが裏目に出ていて少し目立ってしまいました。日本人俳優演じる中国人役の日本語はわざとたどたどしくしする演出をしていましたが、やはり端折った感じです。ただ「テレサテン物語」ほどはひどくなくて、沢口さんはじめ、多くの日本人がここぞという場面ではかなり上手に中国語を話していました。

脚本、展開以外で比較してみると、上戸彩「李香蘭」での映像の美しさ、歌を含めた音楽の素晴らしさ、この2点が印象に残ります。ヘアメイク、衣装、小道具大道具、カメラワーク、音響・バックミュージックなどの細かなところが進化しています。逆に綺麗過ぎて、時代考証的にはフィクション感が強いかもしれません。

李香蘭以外の登場人物では、山家氏の描き方がどうしょうもない阿片中毒者として描かれ気の毒なくらいでしたが、そこから抜け出せずに戦後自殺したことを考えるとより史実に忠実なのかもしれません。山田邦子演じる川島芳子に関しては、菊川怜のほうがパンチ力ありました。山田邦子もはまり役だと思いますが、菊川怜にとって乗り越えるいい目標になったものと思われます。川喜多さんについては、とことん誠実な人柄を出す演出がしてありました。

李香蘭になりきっていた、いない、これに関しては人それぞれの印象があり実はあまり重要ではないと思います。本人に近いことが大切なのでなく、本人の抱えていた何を引っ張り出しどう表現するか。沢口靖子は撮影後半にはすこしやせたようで、もともと美形の顔がさらにシャープな洋風の顔立ちになって本物の李香蘭に近かったかもしれません。また声の調子なども毅然とした主張ができていて、清楚でありながら、したたかでもあったといわれる本物の李香蘭に近かったかもしれません。ただ、李香蘭が味わったであろう苦悩、これは上戸彩「李香蘭」の脚本・演出、そしてなにより上戸彩さんのいっぱいいっぱいの演技により多く感じ取ることができました。

沢口靖子さんはこの作品の4年後に「エトロフ遥かなり」という、やはり戦争直前の緊迫した時代を描いたNHKドラマで素晴らしい演技をされ、女優として飛躍していったと思います(このドラマはお勧めです)。上戸彩さんも「李香蘭」を踏み台に素晴らしい女優さんになるのかなと思います。

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コメント

ななさん

コメント頂きありがとうございます。沢口靖子主演の方のドラマ「さよなら李香蘭」エンディングの「行かないで」はyoutubeでは、Li Xiang Lanというタイトルで海外の人が多く上げてますね。

投稿: bikoran | 2012年3月 7日 (水) 09時08分

さよなら李香蘭(沢口靖子主演)の方が私は、しっくりきました。あと、このドラマのエンディングに流れる玉置浩二の『行かないで』という歌も心に響きました。

投稿: なな | 2012年3月 4日 (日) 19時48分

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