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2008年3月 9日 (日)

遅ればせながらLust Caution見た

Photo_5 遅ればせながらlust, caution(ラスト コーション)やっと見ました。アメリカのノーカット版DVD定価$20をeBayで$15でお買い上げ。ちなみにアメリカのDVDはリージョン1と言って、日本のDVDプレイヤーでは普通は見ることができません。日本やヨーロッパはリージョン2という地域になっています。アメリカとか東南アジアの値段よりも日本やヨーロッパではDVDは高い値段を維持されているんですね。たぶんこの映画も日本では3000円くらいで発売されると思います。

余談が長くなりますが、ではどうやってリージョン1のDVDを見るかというと、パソコンを使えば見れます。私のプライベートパソコンはMacなのですが、Macだとリージョンの変更は5回まで。5回リージョンを変更すると最後にセットしたリージョンで固定されてしまいます。そこで外付けDVDドライブを使ってこちらをリージョン1、Mac本体をリージョン2にすればどっちもセッティング1回であとは固定で見られるってわけ。Windowsだともっと手軽な方法があると思います。あ、あと、このアメリカ向けDVD、台詞は中国語となぜかフランス語を選択可、字幕は英語、フランス語などで、日本語はなし。はっきり言って英語の字幕追うのは疲れました。やはり安いなりにデメリットもありますね。英語力はつくかもしれないけど。

さて、感想を簡単に。まず期待が強かったせいか、あるいは、即効薬的お涙シーンをシナリオに入れていないからか、感動がなかった。というか、ネタを知りすぎていたからかな。なにせ原作がモチーフとしたオリジナルな情報lを探求してしまってたので。事実の方が遥かに興味を引き、やはり事実は小説より奇なりなんだなと。

夜中ちょっと疲れ気味のときに見たせいも有ると思うんだけど、なにせ、映画の主人公のワンチアチがなんとなくピンルーを思い起こさせるぞ? なんて思って、いやそれってピンルーをモチーフにしたんだから当たり前、ってことにしばらくしないと気づかないとか。いけませんね。

それだけ私の場合、ピンルーに入り込んでいた証拠かもしれない。ピンルーはああじゃないから。ピンルーにあってワンチアチになかったのは、日中混血という立場、アイデンティティの苦悩。これがラストコーションには無かった!皆無。ワンチアチは生粋の中国人学生で、ストレートに中国万歳な立場。だから日本を小馬鹿にするせりふも普通に言えてしまっている。国籍とアイデンティティの相克という重要なポイントで、ピンルーとワンチアチは最初から最後まで重なることはなかった。



この映画の主題は原作小説をしっかり踏襲している。男女の愛憎、情と理性のせめぎあい、ですね。つまり、原作者張愛玲の思いを映画化したものでした。張愛玲はこれ絶対喜んでますよ。日本の傀儡政権、汪精衛政権の幹部である胡蘭成と結婚。売国奴と結婚したことへの批判、彼の愛人問題に悩みながらも離れられない苦悩。張愛玲はその複雑な思いを「色戒」に著しました。

ピンルーそのものを描くドラマが今中国のテレビ局で企画されているようで、こちらは日中混血という立場がしっかり描かれるようなので、少し期待もしていますが、監督の経歴を見るとどうも抗日烈士みたいなキャラを付けそうな予感もあってどうなるやら。こちらのほうが失望が大きいかもな。その前に日本で見る手段があるのか、というのもありますけど。

さてこの映画、ワンシーンワンシーンを取り出すと、それなりにスリリングな展開もあります。宝石店で石を選び、指にはめ、徐々に感情が高まり・・・・・彼が脱兎のごとく逃げ出す、この辺の展開は映像ならでは。ワンチアチを演じたタンウェイの表情での演技、唇の動きだけで感情の変化を表現する演技、これはなかなかのものです。対してワンチアチの相手役、トニーレオンは目で演技する人でした。

Photo_6 また、周旋が映画「馬路天使」で歌い、李香蘭もカバーした「天涯歌女」、これを日本租界内の料理屋の座敷でワンチアチが歌い、舞うのですが、これは秀逸ものでした。タンウェイは新人さんらしいですけど、実力派だと思います。今後の中国映画、あなどれません。というか、ハリウッドがユダヤ系の利益保護をサブリミナルに行ったのと同じで、中国が世界標準の映画を使って日本をどうにでも扱える立場になるのでわ?という恐ろしさも感じます。国際的な戦略的思考は日本人を遥かに上回った能力を持ってますからね、彼らは。この映画に出てくる日本人は軍人さんがほとんどですが、料理屋でだらしなく飲んだくれているか、検問で中国人を銃でこずいているか、そんなシーンでしか出てきません。あと天皇が小馬鹿にされたりとか。まあ微妙に屈辱的な描かれ方をしています。

日中戦争そのものが、戦略の上手、下手で勝敗が決まりました。グローバルなマスのコミュニケーションを通じてもう一度中国に戦略的にやられちまったら怖いな、と思います。去年でしたか、慰安婦問題が突如アメリカ上院で蒸し返されました。どう考えても中国ロビーの活動でしょう。今も昔も彼らはグローバルに動いているし、日本だって手をこまねいている訳にはいきません。そんな視点を持つとギョウザの件もなかなか興味深い見方ができます。わたしにとって中国人演じる映画をしっかりと見るのは初めての経験でした。アメリカ在住台湾人監督の手になるこの映画に日本をどうのという意図は無いでしょうけど、そんなことまで連想してしまう、初の中国系映画体験でした。

2009年11月14日追記

中国が「日本をネタにして国際的な映画を作り、国家戦略とからめていく」という私の危惧が、さっそく実現してしまいました。映画「南京!南京!」なる、南京大虐殺を描いた映画が公開されました。映画「南京!南京!」を見て ←こちらに映画評を書きました。

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コメント

前回のコメント、ダブってしまい、申し訳ありません。ひとつ除去してください。
香港の鳳凰テレビが制作したという『暗香』という、『色,戒』の背景を探るというテーマの番組をごらんになりましたか。ぼくは偶然VCDを手に入れて観てみました。

投稿: 蓮 | 2012年6月25日 (月) 09時50分

蓮様

コメントありがとうございます。
この映画は鄭蘋如の史実とは関係無しに見ると意外といい映画かもしれませんね。松崎啓次の上海人文記の「除小姐のロケット」も、映画化されるとかなり面白いものになると思います。

投稿: bikoran | 2012年6月25日 (月) 01時25分

今日は。お久しぶりです。
ぼくもやっとこの映画を観ました。
香港の場面はちょっと子供っぽい感じでしたけれど、上海で再会してからのふたりの絡みは充分に愉しめました。湯唯はよく演じていたし、梁朝偉はさすがに芸達者だと思いました。日本料理屋で歌と踊りを披露する湯、それに拍手をする梁には哀歓がこもっていましたね。
鄭蘋如とはまったくといってよいほど関係のない話になっていましたね。

投稿: 蓮 | 2012年6月23日 (土) 23時32分

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