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2010年1月17日 (日)

中支那派遣軍報道部放送班概要 (史料2)

引き続き、大上海放送局の運営組織、中支那派遣軍報道部放送班の概要についての文書を引用する。

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(二)報道科
1,要員
現在6名にして、科長の下にニュース編集、翻訳、庶務の3係を置き、ニュース編集係に主任1、経済ニュース係1、を置き、原稿の編集に当たらしめ、翻訳係に主任1、を置き、庶務係1名は原稿、新聞切り抜き、記録その他の雑務を担当す。

2.業務の現在および将来
(イ)ニュース
北京語一日二回、上海語一日一回、広東語一日一回、英語一日一回

(ロ)ニュース解説
新語、新問題の解説、週間ニュース、以上いずれも北京語により宣伝的内容を盛りたるもの

(ハ)経済ニュース
上海語により為替相場、重要商品値段等

(二)講演
放送科の講演とは別個に近き将来、政治的思想的なものを一週間一回まで放送する予定なり。反蒋防共親日を内容とせるものにして中支新政権成立後は、極めて必要なるものと認める。

3.一キロ短波による奥地向け放送

漢口、重慶、長沙等の蒋政権中心地に向け、四月十五日より純然たる宣伝放送としてニュース及びニュース解説を放送せんとす。聴取層は、蒋政権の言論統制下にあることを顧慮し、これに対応して緩急よろしきを得たる編集方法による予定なり。なおこれには演芸を挟み、放送科とタイアップする放送なるも、便宜上報道科の欄に記し置くものなり。

4.報道方針

支那民衆を反蒋、防共、親日の方向に誘導し、敗戦支那、中北支における決定的事実の暴露、開明に努め、皇軍占領地域における民生楽○(注:○は判読不能)、治安、宣撫の実情等地方状況の周知に意を注ぐ。

5.取材

同盟通信社、陸海軍報道部、外務側その他より提供の材料を、適宜編集し、又支那側新聞その他により支那側の情報を逆用する宣伝ニュース編集して、デマ宣伝に対抗しつつあり。

6.将来の計画

事態の推移-中央新政権(注:親日政権の維新政府)の成立等-により、大方報道放送は宣伝より宣撫の方式によれるも、将来報道放送の一部をもって支那人の実生活に利用せしめんとし、日本事情紹介、職業紹介、遺失物の知らせ、出入船舶の知らせ等を計画しつつあり。

(三)技術科

1.要員

現在25名にして、技術科長の下に、

放送所係11,(内主任1、甲組4、乙組4、工作2、とし甲乙組は日夜勤交替危機の保守、調整を行う)

演奏所係7、(内主任1、係員6、虹口及び南京路両演奏所の機器の保守、調整を行う)

試験係3、(内主任1、係員2、諸計画に伴う機器の製作及び試験を行う)

庶務係3、(技術用品の請求、警戒、衛生、炊事等の雑務)

2.設備の概況

(イ)放送所
昨今改良工事も一段落を告げ、性能優秀なり。但し、長時間の運転及び酷暑期における耐熱設備、長期間運転に対する予備設備等、今後相当の追加施設を必要とし、目下計画並びに工事を実施中なり。

(ロ)演奏所(注:スタジオ)
楊樹浦(注:ヤンジュッポ)放送所、虹口演奏所及び南京路演奏所は、いずれも一室までの演奏室を有するも、応急的設備なるため長時間の使用は衛生上不適当なる箇所あり。又音響設備の上にも多々改良を必要とするも臨時設備としては一応の使用に堪え得るものと信ぜらる。なお設備の改良、拡張の計画並びに実施を行いおれり。

(ハ)連絡線
虹口演奏所及び南京路演奏所と放送所を連絡する線路は、すべて上海電話会社より専用線なるが故に、性能良好ならず。又時々障害に遭遇し、その都度少なからざる放送支障を受ける状態なり。最近、該線の特性を改良する装置を研究の上追加せるも、なお外に超短波により演奏所と放送所を連絡することを計画し、目下機器試作中なり。

(二)大東放送局との連絡設備
大東放送局との間には、番組交換用連絡設備ありて、相互に放送番組を交換中継し得る状態にあり。

(ホ)日本電信局短波1KW電話送信機との関係
右送信機は9,300KCにより毎日午後九時より十時まで(上海時)奥地向け放送に使用するものなるも虹口演奏所よりこれに放送番組を供給するために連絡線及び機器設備を有し、操縦のために臨機人員を派遣することあり。

3.計画中の設備
(イ)放送時間延長の対策
現在午前十一時より午後十時十分(上海時)の放送時間なるも、将来なおこれを延長すべきにより機器設備及び人員配置計画を進めつつあり。

(ロ)ラヂオ塔拡声器
広く大衆に聴取せしむべくラヂオ塔及び拡声器を上海市内、南京杭州塔に設置する計画の下に、機器準備中にして、取り敢えず調査のため係員三名近日中に杭州に出張の予定なり。

(ハ)共同聴取設備
現在南市に一組の共同聴取設備を実施おるも、更に適当なる箇所に増設すべく目下設計中なり。

(二)超短波装置
上海電話会社の市内電話線を使用して、放送を実施することは、種々の不便不利あるをもって、これを超短波装置により置換せんとし目下機器製作中なり。

(ホ)搬送電話線装置
南京蘇州等との間における臨時中継放送に供すべく、又放送に使用せざる時は軍通話回線の一補助装置となすべく、搬送電話装置を設計し、一回試験を行いたる結果、可能の見込みつきたるに付き、目下一組の通話装置を設計中なり。

(四)業務科
現在12名にして文書、会計、庶務の3係に分け、おのおの陣中日誌、諸報告、人事、命令会報の伝達、文書、金銭出納、予算、物品の受払保管、配車、衛生、炊事、警戒等を担務す。

(五)現在主任1、聴査2、雑役1、にして四月一日より業務を開始、三回に亘り各放送局に対し司令を発して監督権の接収と再認可の必要を通告したり。これに対し目下四局の申請あり。将来機能の全面的発動行使により、中支放送局群に対する放送電波の監督取り締まりに遺憾なきを期せんとす(広播無線電監督所業務報告号外其一参照)

以上

本報告の内、虹口演奏所及び要員宿舎移転の件は、軍報道部において好適の建物を使用せしむべきに付き、近日中に移転の予定なり。

備考

本書は在上海中村技師より通信部会長宛参考まで報告ありたるものなり

(統括部)

------------全引用終わり

参考として、「ラヂオ年鑑 昭和15年1月5日印刷版」に大上海放送局のプログラム、「放送事項別時刻表」が掲載されていたので以下、記載しておく。

平日午前

11:00〜11:30 家庭の時間

11:30〜11:59 宗教の時間

11:59〜0:00 時報(北京語)

平日午後

0:00〜1:00 レコード(洋楽)

1:00〜1:30 ニュース(英語)

1:30〜2:00 レコード(北京劇)

2:00〜2:30 ニュース(北京語)

2:30〜3:00 経済市況(上海語)

3:00〜5:00 休憩

5:00〜5:30 子供の時間

5:30〜6:00 ニュース(広東語)

6:00〜6:30 日本語講座

6:30〜7:00 ニュース(上海語)

7:00〜7:30 講演

7:30〜7:45 休憩

7:45〜8:00 ニュース(英語)

8:00〜9:00 演芸

9:00〜9:25 ニュース(北京語)

9:25〜9:50 演芸

9:50〜10:05 時事解説(北京語)

10:05〜10:10 番組予報(北京語)

休日プログラムは、午後6時からの日本語講座が北京語の週間ニュースになる。

「上海人文記」には、テンピンルーは「北京語、上海語、英語を自国語のように話す」と書いてあり、また、徐小姐は広東出身とある。したがって、ニュースのうち北京語、上海語、英語をテンピンルーが、北京語、上海語、広東語を徐小姐(仮名)がアナウンスしていたと思われる。

上記概要には、虹口演奏所が近日中に移転の予定と書かれているが、福田敏之著「姿なき尖兵」によると、確かに1938年4月に日本人倶楽部からホテルアスターハウスの2階に移転したとある。上記の報告書だと、狭くて不衛生ということが理由のように書いてあるが、福田は、

「致命的なことは、共同租界に住む中国人タレントが蘇州河を越えて虹口に来ることを嫌がった。つまり漢奸と見なされることを極度に怖れたからだった」

と書いている。こちらが本当の理由なのであろう。映画「上海の月」の滝村プロデューサーが書いていたように、1940年頃までは複数の中国人職員が抗日側のテロにより暗殺されている。

このような状況の中で、中国人アナウンサーという仕事をテンピンルーと徐小姐(仮名)は行っていたわけである。

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