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2008年11月24日 (月)

ドラマ 「男装の麗人 川島芳子の生涯」

12月6日夜9時からテレビ朝日系でドラマ「男装の麗人 川島芳子の生涯」 を放送するとのことだ。

Photo 読売テレビの「鄭蘋如の真実」や日本テレビ「女たちの中国 第二弾」での李香蘭、川島芳子、鄭蘋如、愛新覚羅ヒロ、そして今回と、今年は1930年代上海の日本絡みの女性がテレビによく登場する。一種のはやりなのだろうか。

これらの番組を見ると、最後のクレジットロールで、リサーチャー○○と出てくる。番組の脚本を書く前に、こうしたリサーチャーを雇って、時代考証をし、事実関係を調査しておく担当を置くのだろう。脚本家やディレクターが汗を流して調べる訳じゃないのだ。ひょっとしてバイトだろうか。国会図書館に行くと、熱心に調べ物をしている学生さんが多い。もちろん自分の専門の研究のためだろうが、たまに雑談を耳にしているとこういったテレビの情報収集のバイトかなと思うときがある。日テレの「女たちの中国 第二弾」では日本人女性がリサーチャーを担当していた。鄭蘋如の部分に限ればはわたしには情報のソースがだいたい検討がつく。ここの台詞はこの本の何ページの何行目の台詞をそのまま使ったなとか(我ながらこれはオタクの領域かもしれないと思う)。

読売テレビの「鄭蘋如の真実」では中国人女性がリサーチャーだった。やはりと思う。内容が中国側に立った内容だったからだ。私は脚本家やディレクターは自分で史料を当たるべきだと思う。鄭蘋如に関しては、見方が日本側と中国側で分かれる。それぞれ政治的立場があるのだ。

今回のドラマ、「男装の麗人 川島芳子の生涯」。どんなドラマになるだろうか。予告編の動画を見たら、養父川島浪速が芳子を強姦するシーンや、明るい昼間、桜の花が舞う中で処刑されるシーンがあった。益井康一の「漢奸裁判史」によれば、川島芳子は処刑当日、処刑執行人から最後の言葉を求められ、お世話になった川島浪速に手紙を書きたいと言い、その場で日本文で短い手紙を書いている。いったい誰が強姦相手に「お世話になりました」と手紙を出すだろうか。また、処刑が実行されたのは人目につかない午前5時過ぎの3月の早朝、暗がりの中である。桜が舞う明るい日差しのもとではない。

芳子の兄は、裁判所の判事から金の延べ棒を交換条件として提示され、死刑を逃れる取引をしている。別の説では、暗がりの中で処刑されたのは身代わりとなった末期がんの女性で、家族には金の延べ棒の一部が渡ったという。またタイミングがいいのか悪いのか、芳子が戦後も生き続けたと証言し遺品を提示する人が中国でつい最近現れた。本当のところは分からない。益井も、当時からあった替え玉説を「彼女を惜しむ心理が後日、巷に「刑死したのは替え玉で、本当の川島芳子は密かに脱走して生きている」という噂を振りまいた」と書いている。

「男装の麗人」と番組タイトルに入れているのが実はミソだろう。これは小説のタイトルだ。つまり原作がある。映画「色戒 ラスト コーション」と同じである。川島芳子の「真実」がどうだ、という番組ではない。テレビにそれを求めるのは少し酷な気がする。それぞれに合った媒体があるということだろう。深く濃い情報交換は書面上の言葉と写真など静止媒体で行われる。テレビは基本は情報が記録されない電波媒体であり、流れさっていく。しかし流れ去っていくことで、とても楽な気持ちで情報に接することができ、出演者の演技、脚本家、ディレクターの演出によっては深い感動を得られる。私は今は、ただでさえ「積んどく」の本がいっぱい自室にあるので「男装の麗人」を買って読む気はしない。でもテレビなら見れる。楽しみな番組の一つである。

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